2007年7月6(金)・7(土)日

板室温泉 加登屋別館

1人泊 @8800円(税込み)

Tel : 0287-69-0201

 

板室温泉は塩原と那須温泉に挟まれて、あまり目立たない山あいの小さな
湯治場である。
源泉がぬるめだということでかねてから行きたかったのであるが、なかなか
行く機会がなかった。

山歩きをする人たちにはわりと知られていて、尾瀬や那須のあたりをウロウロし
帰りに板室で汗を流して帰ったという話をよく聞く。
「小さな湯治場だよね。お湯の量が多くて気持ちよかったよ。2日間歩きまわって
汗臭かったから助かった」

 

なんでこんなに大きな別館を建てたのか首をかしげてしまうが、
ひと昔前は湯治客で賑わうこともあったのだろう。
チェックインは2時。新幹線を1本逃し、着いたのは4時前。

 

フロントには<ゴールデンバット><しんせい><エコー>が置かれていた。

 

お兄さんに案内されて、3階に。

 

新築時に植えた木なのだろうか…

 

3階建ての建物より高く育っている。

 

古くなっているがたいへんきれいにお掃除された廊下。

 

今回のお部屋、6畳。テレビ、扇風機付き。
お部屋食なのでテーブルの上にはすでに醤油とソースが置いてある。

むし暑かったが、ガラス戸を開けると涼しい風が入ってきて扇風機は
必要なかった。

 

ガラス戸の外は山の景色。
テラス部にガラスがはめ込まれ、風景が素通しでよく見える。
ガラスがピカピカに磨かれていて感心した。
これを維持するのは大変なことだ。

 

旅館の前が工事中でやかましい… お兄さんに尋ねると
「前の旅館、建て替えるんです。しばらく続きます」朴訥な笑顔で
返事が返ってきた。

まあね…

予約のときに「前が工事中でうるさいですよ」とは言わないよね…

 

ちょっと運が悪かったかな〜
じつは静かな温泉で少し勉強しようと思ってやってきたの。

歯ブラシとフェイスタオル。浴衣。

 

廊下に数箇所ある流しとトイレ。
部屋のポットにお湯を入れるための給湯設備もある。

 

トイレも綺麗にお掃除済み。
その後かなりの頻度で点検されているのが伺えた。

 

2階にある2箇所の大浴場は日替わりで入れ替えるため、
2泊しないと両方に入れない。

 

脱衣所。

 

本日小さいほうのお風呂が女湯。

 

このかけ流し…

 

桶も椅子もどっしり重い漆塗りの木製。

 

う〜〜〜

 

2つ目の湯船のほうがぬるく、ちょうどよく、押し寄せるお湯の流れに身をまかせ…

 

外の緑を眺めながら…

 

ああ〜 いいお湯だった!

お風呂からあがると、空には燕がさえずり、群れをなして旋回していた。

 

しばらくすると電線に留まり、やがて消えていった。

朝夕この状態だったから、多分「1日2回はみんなで集まろうね!」
ということらしい。

 

6時過ぎに「お待たせしました!」とお食事。

「いまお皿に火をつけますか?後にしますか?」というのでつけてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

これは何なのでしょう?

お酢の入ったいちじくの煮物でした。

 

火を入れたお皿は帆立とキノコのクリームソース。

 

コーヒーゼリー?

黒蜜のゼリーでした。食べ終わったらお膳を部屋の外に出す。

おじいちゃんおばあちゃんにおいしく食べてもらえるように、
豪華ではないけれど栄養も素材も見た目も、工夫してあるお食事だった。

 

夜のお風呂も貸切。1時間ゆらゆら。

お布団はさきほどのお兄さんが敷きにきてくれた。
その最中、5歳くらいの女の子が部屋に入ってきた。
宿泊客のお孫さん?? お兄さんとのやり取りを聞いているとどうもこの宿の子供らしい。

じゃりんこチエの如く彼女は、お兄さんが敷いているシーツの上で泳ぎ、枕カバーに頭を突っ込み、掛け布団にジャンプした。本日私が寝る布団である。

使用人のお兄さんは穏やかに相手をしながら、しかしシーツはかなりゆがんでセットされたまま「おやすみなさい」と笑顔でチエを連れて出て行った。日常化されているらしい。

これは問題かもね〜

毎年やってくる親戚付き合いのようなおじいちゃんおばあちゃんには許されても、この感覚がまかりとおっているということは、この宿にとって致命的な事態ではなかろうか。

私は気にしないので、まがったシーツを自分で整えてそれでお仕舞、であるけれど。

その夜は10時半ごろまで、階下にはチエの蛮声が響いていた…

 

工事が始まってうるさくならないうちに、朝は早よから持参のコーヒーを
飲みながら読書に専念。

 

目が疲れ肩がこってきたら温泉にどっぷり〜。1時間もするとスッキリ〜!
すっごくいい生活!

 

8時半ごろ「おまたせしました〜」

朝ご飯。

 


 

 

1階奥にある家族風呂。鍵がかかり貸切になる。
風呂に行く途中の廊下には、チエのおもちゃが散乱していた。

 

溢れてる。

 

山の緑が見える、小さなお風呂。

 

朝8時から12時まで、お風呂はお湯を抜かれお掃除されるので、
10時ごろ本館に貰い湯に行く。別館宿泊客はタダ。

仕入れた情報によれば、この工事は、かつて継ぎ足し継ぎ足しの迷路のような湯治宿だった旅館が、あるとき思い立ってひと部屋改造して “スウィートルーム” なるものを造ったらこれが評判がよろしく、しかし従来の湯治客は差別化されるのでそちらからはいたく評判が悪く、宿も老朽化したし、この際新築!とういことにあいなったらしい。

新しい宿は、おそらく全室 “スウィートルーム” なんだろう。 

 

饅頭屋1軒、コンビニ1軒すらない山の鄙びた湯治場は、いま時代の風が
ゴウゴウと音をたてて吹き荒れているのだ。

 

現にチエちゃんのうちの隣の宿は<アートの宿>と称し高名な画家の
個展なんかをやっていて、チエのうちの前を素通り、ベンツで乗りつけて
泊まりに行くのである。

 

加登屋本館。いい建物だね〜〜!

あ… この前の宿もシートをかけて工事中。

 

この建物も継ぎ足し形式で横に延びている。

 

こっちに泊まればよかったな〜
静かだし…

 

1人入ればいっぱいの小さな湯船の女湯・男湯2箇所の風呂。

宿泊客がいないので、男湯のほうに入れてもらいました。

 

小さい枡の下から熱いお湯が出てきて、2つ目の枡に流れる。

すぐ裏の川から涼しい風が入ってくる、可愛いお風呂。

 

散歩。

 

正面、加登屋別館。 2階の左側が大浴場。

 

川のそばには遊歩道が造られ、この自然がいいね〜。

 

宿に帰って混浴の打たせ湯に。 誰もいないといいな〜

 

誰もいなかった。

 

 

 

そんなに注意するほどぬるくない。
38度くらいなので私にはちょうどいい。

この温泉郷は源泉がぬるいことをすごく気にしているようで、
集落の宿はすべてボイラーを持ち、加温しているとのことであった。
ぬるい源泉の良さを活かしていないのがとても残念である。

 

「ぬるいのでゆっくりお入りください」という言葉と裏腹に、このお風呂も
音がすごくてとてもそんな気分になれない。
打たせ湯に至っては、もうご勘弁を!というほどうるさいのであった…

 

本日お風呂入れ替えで、大きいほうの大浴場に。
ここを期待しているのだ〜!!

 

おじさんのほうにはスリッパが3足。

 

女湯は貸切!!

 

2泊してみて分かったことは、おばあちゃんたちは毎日お掃除された直後、
一番風呂に入るのである。で、お昼過ぎに行くと4〜5人いるのである。

夜は早寝するので、9時前後にまた4〜5人。
それ以外は貸切であった〜

 

贅沢だよね〜。

ドバドバ系の蛇口からすごい量のお湯が出て、まあちょっとうるさいがこの広さなら
さほど気にならず。

そのお湯が滔々と溢れ溢れて次の湯船に、それがまた次の湯船に、と。

 

窓ガラスも綺麗に磨かれ、青々と緑が美しい。
ガラス戸ガバッと開けても、虫はほとんどこなかった。
夜も窓を開けたが、虫は目の前の強力な街灯に集まって風呂場にはほとんど
入ってこないのであった。

 

3つ目の湯船はかなりぬるめで、内湯だけど開放感があり、押し寄せる
豊富な湯量がすっごく嬉しい。

 

そして景気よくジャカジャカと流れていく。

 

25cmほどの浴槽の張り出し部分に寝て頭を縁に載せると寝湯になり、
ゆらゆらいつまででも入っていられる。

あ、太めの人は落ちるわよ〜

 

やっぱ、これだよね〜。 醍醐味〜。

 

源泉を何本も持っている宿である。
これは熱めのお湯。 ジャカジャカ。

 

ドバドバ。

 

夕ご飯。

「お待たせしました〜」

 


 

 


 

タレは市販のものだったけれど、牛肉は入れ歯でも食べられるくらい
充分に柔らかく、おいしかった。

 

曇っているので朝晩はかなり涼しい。
東京は暑いだろう。

 

 

 

客のシーツの上ででんぐり返りしてパンツを見せていたチエちゃんも、
あと十数年すれば若女将となる。

 

そのとき引き継ぐものは、源泉は豊富、そして部屋数は多いが閑古鳥が鳴く、
老朽化した温泉宿である。

願わくばチエよ… そのとき建物だけでなく…


いま従業員と共に汗水たらしながら、この宿の風呂を毎日掃除し、隅々に
掃除機をかけさせトイレに目を配り、テラスのガラスを磨き、食事の献立を
やりくりしつつ老人に心をくだいているおっかさんの志をもまた受け継いで、
ここはひとつ<いい宿>に成るべく努力をしてもらえないだろうか。

部屋付きの露天がなくていい。
館内にお香がたち込めていなくてもいい。
生け花が置かれていなくてもいい。
初めての客に「お帰りなさい」と挨拶しなくていい。

 

おじいちゃんおばあちゃんも若者も、手ごろな料金でぬるい豊かなお湯に
のんびり浸かり、山の景色を楽しみ、家庭的で温かな食事でもてなされ、
清潔な館内で気持ちよくすごせる…

湯治場という日本の文化の上に根ざした、「また来ようね」といわれる宿に。

 

チエにそんな宿にしてほしいと…


行きずりの旅人は思うのであった。