山形・白布温泉 中屋別館 不動閣


2006年3月3〜4日
ビューパック2泊3日 交通費込み 3人泊@32700円(税込み)

http://www.nakaya.viccam.com/

 

大きな仕事がダラダラと収束し、イケメンもやれやれ。

「さーて、どんなとこがいい?」
「えーっとね…  おいしいとこ!」

イケメン、お嬢2に、温泉の楽しさを教えてくれた私に感謝してるって語ったそうであるが…
ちょっと教育を間違えたかしらん…

風呂も食事もすべて良し、なんて宿はそうそうない。
自分のところの風呂が良くない宿は、何とかひきつけようとしてお食事やそのほかを工夫して頑張るのである。
すべて良しなんて宿があったら、あれこれ探さないでそこだけに行くわい!

今回私はいい風呂に連泊でのんびり入りたい!
ゆえに、お風呂とお食事はキッパリ分離である!

そういえばヤツはパソコンのプロではないか!100万アクセスのサイトだって運営してるんだし。

「風呂は私が探すから、帰りに食べる米沢牛は自分で探しなさ〜い」
「了解で〜す」
 

 

3月… 雛の月… 寒くて冷たい雨が昨夜までふり続いていた東京は本日いいお天気で、旅行日和。

福島から分かれた新幹線がコットンコットンと違う音になって単線を30分ほど走ると、あたりは雪景色に。

 

米沢駅は牛肉弁当で埋め尽くされている。

 

ビューパックでは宿から2時に米沢駅にお迎えに来てくれる。

駅前にはもう雪はなし。


 
ときどき粉雪が舞う真っ白な道を30分ほどで宿に到着。

情報量の少ない宿である。

HPを見てもいまいち感じがつかめない。

しかし私はこの宿の露天に心ひかれた。
オリンピック風呂はともかく、露天というより展望風呂であるが、その写真を見て、
これは、もしかすると… すごくいいかも… 
まあ、もしだめだったら<東屋><西屋>に日帰りで行ってもいいし…と、長らく思っていた。

木造の旧館に、川に沿って細長く新館を付け足したようなかんじ。
 

 

車から降りて歩いた雪を払って新館の玄関に。

 

正面の火鉢の前でお茶をいただき、記帳。

 

右手に長くつながる廊下の向こうに小さいフロント、その先に客室が。

通路の左側にロビーがある。

背後の廊下は本館につながり、2箇所のお風呂がある。

川沿いに建っているので、ここは2階である。

 

ロビーに飾られた碁盤。

このお宿は「本因坊戦」が行われるお宿なのだ。

 

ところどころにストーブがあるが、寒い廊下。

部屋ごとに入り口に衝立。

 

12畳・洗面付きのお部屋。

古い1枚のガラス戸の向こうは、ちょっと息を飲む雪景色。

 

衛星放送が入るテレビ。

お茶請けは「瓦煎餅」。

通常のアメニティ、バスタオル。

廊下の隅のストーブが頑張ってる。

 

山形だよね〜 という雪景色。

満足!

 

お湯の出る洗面台、電気ポット、ゆとりありの冷蔵庫。

 

廊下にあるトイレ。

 

入ると自動的に電気と換気扇がオンに。

和式と洋式があり、洋式はウオームレット。

 

ひと休みの後、誰も来ないうちに風呂、風呂〜〜

まだ他の宿泊客が来ていない昼間のこの時間、地元の日帰り客のみ満喫できるこのお風呂こそ、醍醐味である。

私にとっての宿泊とは、この一瞬に賭けているようなものである。

長い廊下を通り、旧館に入る。

由緒ある造りである。

 

旧館の通路を通り、正面左階段を上ると<オリンピック風呂>、正面右の通路を下がると<露天>に。

左のコーナーに自販機が。

コーヒー150円、ビール300円、ペットボトル200円など。

 

男女別の露天のドア。

正面の棚の脇に冷水、その奥に骨董品のようなマッサージ機があった。

動くのかな?

 

衝立があり、カゴがあるだけの脱衣スペース。

さむ〜〜〜

 

お嬢2と、さむ〜〜 

  さむ〜〜〜ううう〜〜〜 

は、はやく入ろ〜〜〜

 

うわっ! いいよ! 

  え? ほんと?!

 

2人であせってかけ湯。

 さむ〜〜  

   あ、あったかい! 

 さむ〜〜〜

 

あああああ・・・・

 

んんんんん・・・・

 

ふうぅ・・・・

 

いいいいい〜ぃ・・・・

 

はぁ〜 … 

「すっごくよくない?」

「うーん、すっごくいい!!」

 

あ…!  

  しあわせ!

 

目の前は一幅の絵画のような風景。

かつ誰もおらず貸切。

山の清冽な空気。

時々風にのって粉雪がかすかにちらつく。

お嬢2とともに、ため息をつきながらのびのびと体を伸ばす。

 

ちょうどよい温度で、汗が出てきたら縁に腰掛け、また入る。

なんていいお風呂なんだ〜!!

最上川の源流<大樽川>が雪の下からわずかに黒くのぞいている。

こんな細い小川が、やがて「五月雨を 集めてはやし 最上川」となって日本海に注ぐのだ。

 

源泉は60度と書いてあるが、かなり冷えているのだろう、やけどするようなことはなく、手で受けて飲んでみる。

無味無臭、穏やかに丸い味である。

小さい白い湯の花が一面に漂う。

2人で1時間半近く入ってしまった。

 

イケメンもいたく満足。

お風呂から上がればこんな状態。

じつは私はある危惧があった。ので、ヤツに聞いてみた。

「もしかして… ゴミがいっぱい浮いていると思ってんじゃない?」

「うん。だからずーっと綺麗なお湯が出ている湯口のそばにいたよ」

あ”!!やっぱり!!

 

お嬢2は驚くが、いままで連れてきた温泉はどこも湯の花がないところばかりなのである。

彼は少々神経質なところがあるし…きっとこれは…予想的中。

ゴミが浮いているというストレスを抱えてあんないい風呂に入るなんて、もってのほかである!

「あれは湯の花!ゴミじゃない」

「そうなんだ〜!」

  … 気が付いてよかった。

 

あ、<オリンピック風呂>もなかなかいいの。

幅は2m弱だけどやたら長くて適温、豊富なかけ流し。

でも私達3人にとっては、単なる洗い場と化してしまい、ここでシャンプーして体を洗ってドブッとつかった後、さっさと出て浴衣をはおり、一目散に下の露天に駆けて行くパターンになってしまいました。

 

お食事。

パック特典で飲み物付き。

すき焼きかしゃぶしゃぶを選ぶ。

初日すき焼き。

1人7〜8枚ありそうなお肉。

 

 

野菜、豆腐、キノコ類たっぷり。

 

突き出しや煮物などの味がかなり濃い。

すき焼きの割り下も同じような味で、ご飯がないと食べられない。

グツグツいってきたのでご飯をもらう。

そんなに特別のお肉ではないが、充分おいしい。

私は小さめのお肉4枚でもういい。

 

お部屋係の、歯が1本しかないおばあちゃんがお給仕してくれる。

「おばさん、この海ぶどうみたいなもの、何ですか?」

「え?あ、それ、海ぶどう」
 (何でここで海ぶどうが…)

「このクラゲみたいのは?」

「それ、クラゲ」 (なぜクラゲ?!)

「じゃあ、このイカみたいな白いものは?」

「それね、湯葉こんにゃく」
コリコリ感があっておいしい。

 

突き出しの中に入っていた初めて見る植物。

「おばさん、これ、何?」

「それね、<みず>の実」

 へえ〜

小さい鞘の中に、豆のような青い実が入っている。

 

そうこうしているうちに、ドッカンと芋煮が出てきた…

おっきな里芋とコンニャクがゴロゴロ、そして牛肉のこま切れ。

これはもう無理かな〜

かつてはハレの日のご馳走だったんだろう…

私はふっと<新庄節>を思い出した。
野球選手のしゃべりのことではない。
山形県北部の民謡である。

「あの山高くて 新庄が見えぬ 新庄恋しや 山 憎や」

山を越えて、里子にだされたのか… 
嫁がされたのであろうか… 
切ない唄である。

「花が咲いたと 都のたより こちら雪だと 文<ふみ>返す」

 

 

たぶん明治政府によって、つるつるのお上品な標準語にされてしまった歌詞の裏に、切ない感情だけがわずかに残る。

この唄はお座敷唄らしく唐突に陽気に
「雀がチュンチュン 烏がカーカー お寺じゃトンビがピーヒョロロ」 と終わる。

1人だけの静かな夜のお風呂。

 



私は食べ残した芋煮のことを思った。

いまでこそ山形は米沢牛。ラ・フランス。佐藤錦。ずんだん餅。飽食の時代、お取り寄せランキン グのベストを占める。

東北の寒村はかつて鯉と干し柿と赤カブしかなく、わずかな塩辛いおかずでご飯をたくさん食べ、
米を食べられないものはヒエを食べ、ヒエさえ口にできない者は口べらしで子供を手放した。

小学校にも行けない子供たちはつらい農作業を手伝い、奉公にやられ、<あの山>を憎み、人知れず涙したのであろう。

一握りの牛肉三昧できる人たち以外、程度の差こそあれ、みんな<おしん>だったのである。

そんな切ない思いをした人たちはまだ生きていて、そしていま、孫をひざにのせ、ホリエモンが逮捕されたNHKの7時のニュースなんかを、家族揃ってこたつで温かな芋煮を食べながら見ていてほしいと思う。

 

ときどき雪が落ちて驚くが、なんとも独特の居心地の良さを感じるお風呂で、充分まったり1時間半。

また1つ、素敵なお風呂とめぐりあった。

 

 

 

 

翌朝は素晴らしい青空。

山全体が日差しを浴びて、嬉しさに身震いしているようだった。

木々からは音もなく雪が落ちていき、凍った枝の先から雫が輝きながらしたたる。

木の根元には、昨日はなかった黒々とした地面が見え始め、ふと気づけば川のせせらぎがはっきりと聞こえる。

 

無音の歓喜のシンフォニーのようだった。

 

朝ご飯。

 

鮭、温泉卵、しらすと大根おろし、姫竹の粕漬け。

 

そして湯豆腐。

 

雪が溶けてくると、裂けた枝や幹が痛々しく、そしていちだんと川の流れがはっきり現れ、時間を追うごとに川音が大きくなっていく。

都会育ちの私にとっては初めての、新鮮な山の春の訪れの体験だった。

 

お昼は1軒だけのお蕎麦屋さんに。

道の上の<東屋>。

<中屋>のあった場所は看板だけが。

 

焼けなかった<西屋>。

30数年前車で山形を北上したときに、いい建物だからとわざわざ遠回りしてここに連れてきてくれ た。

3軒の旅館の見事なたたずまいは鮮やかに記憶している。

「お風呂に入れるよ、入っていくけ?」と聞かれて、若かりし私は「温泉はいいや」と答えたのである。

惜しいことをしたものだ…

 

もう見るものはないのでUターンして蕎麦屋に。

 

パック特典で1割引。

もりそば。

皮も引き込んであるので黒いつぶつぶが。

 

お嬢とイケメンが頼んだなめこ蕎麦。

汁に少しとろみをつけてあり、おいしいそうです。

 

どうしてもお餅が入ったお汁粉が食べたくて、残りそうなもりそばを3分の1くらいイケメンの丼に投げ込む。

「ぎゃっ!!」

「なによ!?」

「せっかくネギを避けてたのにーー!また避けなきゃならない…」

ヤツはネギが嫌いなのだ。

神経質に薬味のネギを全部避けていたらしい。

頼むときに「ネギ抜きで」って言えばいいじゃん!

お餅、おいしかった〜!

 

帰りは蕎麦屋の目と鼻の先にある中屋別館の道に面した門を通ってみる。

 

下に下りて行く階段には、お湯を流して雪を溶かしてあった。

 

本日は土曜で、旧館に泊まる客のために玄関を開けてあった。

雪だるまがお出迎え。

 

スキー客やら、5〜6人のグループやらで、昨夜と違ってかなり賑やか。

木造なので音や声が聞こえる。

宿のほうも気を遣って、1部屋おきに部屋割りをしている。

露天にも当然人がいる状態になったが、なんとか合間を見計らってできるだけ長風呂。

 

本日はしゃぶしゃぶ。

昨夜と同じ味の濃いものだと、厳しいな〜と思っていたら…

 

お肉と野菜は昨夜とほぼ同じだったが、そのほかのものはいたってあっさりしていて、助かった!

 

カニ、キュウリと大根、蓮根の酢の物。

 

サーモンとクラゲのお造り。

 

寒干し岩魚の干物。

まだ温かでおいしかった。

甘塩。

 

芋ガラと油揚げのあっさりしたお味噌汁で嬉しい。

考えてみると、先日行った「一條旅館」1泊、交通費込みで37000円かかった。

ここは2泊して4000円以上お釣りがくるのである。

食事がどうこうなんて、とっても言えません。

充分満足であります。

 

これだけ人がいて翌朝のお風呂を独り占めできる時間は…
朝食時のみ!

「おばさん、明日の朝食いりません。お握り作ってくれればいいです。その間お風呂に入りたいから」

お嬢、イケメン、はあ〜んという顔になった。

どうせいつも朝食なんて食べないのである。

そのあとに米沢牛が控えてるんだし。

 

翌朝お風呂に行く途中お宿の人に「お食事です… か?」

たしかにバスタオル首からぶらさげてお食事に行く人もいまい。

「いえ、お風呂に!」

すごく不安そうな顔をされたので
「お握り作ってもらってますから。
あのお風呂にどうしても入りたいので」

破顔一笑「どうぞごゆっくりお入りください」

偶然、とてもいい時期に来たのかもしれない。 この爽やかな冷たさ、お湯の温かさ、山の景色。

 

流れる雲を眺め、光の中で輝く対岸を眺める。 刻々と微妙に変わっていく風景に心打たれる…

 

朝のお湯の音は、ひときわ美しく響き、熱くほとばしり、ここに在ることの喜び。

 

光の中で、細かい湯の華が舞う。

 

と、突然ずぶっと隣に人が入ってきてギョッとした…
いやはや… かけ湯も挨拶もなしかいな…

見れば年若い女の子である。

「おはようございます」と言葉をかけると「おはようございます」と返事は返す。
人ん家の娘を躾ようなんて思わないからサッサとあがって体を拭きながら
(私も、親の顔が見たい、という言葉が浮かぶ年になったか…)と思う。

まあこれを機に、挨拶くらいして入ってきてほしいものである。

そうやってズブズブ無言で入っていると、そのうち公衆の面前でおばあちゃんたちに大恥をかかせられるよ…
 

 

11時に車に乗る。

帰りの風景は、来たときとまるで違っていた。

真っ白だった道が、生き生きとした緑になっている。

 

お土産処、上杉城史苑で下ろしてもらう。

 

かなり充実した品揃え。

自分の分も含め、各自かなり買い込む。

 

和菓子類もバラエティー豊かで、かつ値段が安め。

いろいろ工夫したものがあり、楽しめる。

もちろん、牛肉製品も充実。

 

さて、これからイケメンがセレクトしたイタリアンにステーキを食べに、地図を頼りに歩いていきます。

 

うらうらと暖かく、久しぶりに私は、この城下町をあてもなく1人で歩いてみたい気分にかられました。

 

もと写真館をそのまま住居にしている。

丸いかわいい窓。

 

目指すは「欧風料理 カッペリーニ」。

到着。

 

ここで意外な事実が判明。

朝食時、歯が1本のおばさんに「ご飯のお替りは?」とお盆を差し出され、断りきれなかったイケメンは、当初予定していたステーキ&スパゲッティー&デザートコースを断念。

3人ともフィレステーキコースに。

お肉の旨み、柔らかさ、トマトの凝縮された酸味と味、おいしい一皿でした。

4400円だしね!おいしくって当たり前!

 

デザート盛り合わせ。

ティラミスにのってるクラッカーはちょっといただけませんが、ジェラートがなかなかおいしい。

 

パクッ!!

 

こうして2泊3日のお風呂三昧の時間は、あっという間に過ぎていったのです。

 

家に帰って、夜おなかがすいたので、作ってもらった塩辛いお握りをいただきました。

お握りの中にたっぷり入れてくれた昆布の佃煮を大部分お皿の上にかき出し、ピリピリする数の子のわさび漬けをほんのちょっと食べ…

そして目をつぶると…

 

お嬢2が「いつまで入っていても、飽きないおふろだねえ」と言ったあのお風呂が…

あのお湯の音が…
あの冷たい山の空気が…

浮かんでくるのでした…

 

 

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