越後大湯温泉 友家ホテル

2005年9月30日(金)  2人泊 @1万3000円(税抜き)

http://www5.ocn.ne.jp/~tomoya-h/

 

 

友家ホテル…

長らく気にはなっていた。

宿のHPからは、作り手の人柄がいきいきと伝わってくる。

そのHPには 「当旅館ではお食事を一番に考えております」 とある。

そうです、そうです。まったくです。

とはいえ<庭園風呂>というのは…
なんともそそられないのである。私には。

 

そしてひと昔前の、コンクリートのどかーんとした建物の、躯体が剥き出しになっている天井の空虚さが気になった。

この手の宿は、ときとして夜10時を過ぎると照明を極端に落としてしまい、スリッパの音がリノリュームの床にぴったんぴったんと侘しく響き、手探りで風呂場に入るときに、よれたマットの端にけっつまずいて、脛に青あざを作ったりする… 

    ことがある…

 

しかし今年の6月にお風呂の増設が終わって、新しく貸切のお風呂が3箇所できたという。

残暑で夏痩せして38キロになってしまったらしい母を太らせるためにも、おいしいお米&おいしいお食事してくるか〜

母は夜中に風呂に行かないし。

さてさて、丁と出るか、半と出るか。

 

長野新幹線で東京から1時間半ほど、浦佐で上越線に乗り換え2駅、「小出」の駅前は何もなくてバスも1時間に1本、ぽつんと待っているタクシーに乗る。

運転手は20代半ばの、若いお嬢さんだった。

刈り入れ真っ最中の田んぼを見やりながら少しずつ山のほうに上がっていく。

途中、山が崩れて、絶壁になった山肌にへばりつくように、改修工事の人が働いていた。

「ここは、地震ではなくて去年の台風で地すべりがおきたとこなんです。この辺は地震でもかなり揺れましたがそれより台風の被害が大きかったです」

 

20分ほどで、国道から、温泉街とは呼べないような細い道に入る。

温泉まんじゅう屋… 

  からの箱がむなしく飾ってある… 

最後の客の影だけが残ってしまったような射的屋…

朽ちたストリップ小屋は、雪の重みにこれから何年耐えるのであろう…

 

若いタクシーの運転手さんは
「確かこのあたりの急な坂を川のほうに下りていくんですけど…」

地図を見て確認してから、慎重に細い道を下りだす。

 

おじいさんがひとり庭の手入れをしている以外、人影はない。

 

「この道は… 
   雪が降ったら大変ですね…」

「はい。土地のものでもかなり大変です」

駅から3950円。

 

2時過ぎに玄関にタクシーが着くと、若女将とおぼしき女性が駈け寄ってきた。

 

広々しすぎるロビー。

人でにぎわった時期もあったろう。

フロントで記帳し、荷物を持っていただいて3階の部屋に。

 

玄関が2階で<庭園風呂>が1階である。

3箇所の新しいお風呂は貸切で、開いているときはいつでもどこでも。

<庭園風呂>も鍵をかけて貸切で自由にどうぞ、とのことである。

 

部屋は12畳プラス6畳。

今回、母が一緒なので本館の和室をお願いした。

ふすまで仕切りがあったのを取り払ったようで、確かに広い。

どちらかというと、だだっぴろ〜いというかんじ。

畳はちょっとくたびれてる。

改装した別館のほうがいろいろ新しいのかも。

 

窓の下は佐梨川。

川音がかなり聞こえる。

若女将、食事の時間、浴衣のサイズなど聞いてくださる。

なにかこう…
  一生懸命感が伝わってくる。

 

洗面台。

初秋のせいか、お湯は出ない。

 

ウォームレットを取り付けたトイレ。


 

庭園風呂。鍵をかけて貸切。
湯量は豊富。でもぬるい。
いくらぬる湯好きでも、じゃぶじゃぶと上からふってくるお湯と、落ち着けない構造に、5分で退散。
 

 

がらーんとした洗い場。

 

新設の「扇の湯」「龍神の湯」の前のお休み処。

懐かしい味の冷たい麦茶が置いてある。

 

どちらも貸切。

 

「龍神の湯」脱衣所。

 

かんぬき代わりの木をかって入る。


 

先に湯船に入った母が「あ! 体が浮くわ!」
(なーにばかなこと言ってるんだろ)と思いつつ、入ってぐうっと足を伸ばした途端、
ふわっと腰から上が浮きあがり、口までお湯に浸かり… ぐぶっ!

「なにやってんのよ! だから浮くって言ったでしょ!」 ははっ! 仰せのとおりで…

不思議な感じである。
母「食塩泉かしら? あら、違うわ」なめている。
無色透明・無味無臭。温度ぬるめでちょうどよし。
 

 

う〜む… 龍神の湯ね〜
微妙にお湯の比重が重いのだろうか、初体験であった。

ブースで仕切られた内側に、シャワー、カランがある。

 

対岸は大型旅館なので簾があるが、一部巻き上げてあり、川がよく見える。

 

新しい、すがすがしい、タイル張りのお風呂である。

タイルにこだわったのは、よくわかる。

 

溢れたお湯は、湯船の外側の排水溝に。

 

新しいお湯は内壁から出てくる。

 

こんなに綺麗で気持ちよいお風呂が貸切… 

入ってくる風も心地よい。

今回、なま足ね〜

 

ドレッサー。

 

アメニティ。

 

どう使っていいのか困っている感のある、1階・庭園風呂脇の大きなホール。

 

ここに立ち、川を望み、ぐるっと歩いて。

そして、何をするでもなく、部屋に帰るしかない。

 

お食事!

食前酒はプラム酒。

「久保田」「緑川」「八海山」ははずして… 

「高千代」純米いってみます!

「何合お持ちしましょう?」と聞かれて、ひえ〜〜い、1合で結構です…。お燗で。

 

 

とろりとして温かく、南瓜のほこほこの余韻にあふれたクリームスープ。

 

ほどよい温かさの「高千代」、かろやか、すっきりとした香り、ぜんまいの煮物のごま油の微かな風味と相まって、出しゃばらず豊かに料理を引き立てる。

ローストビーフにも負けることなく、あっさりとした肉の、重量感をくっきりと浮きたたせるような存在が見事。

 

なが〜いぜんまい、よく太ってしっかりと染みた味付けは、けして濃くない。

蕗にもぴりっと隠し味が。

 

「天使の海老、マグロ、子持ち昆布です」
ええっ〜! 天使の海老? ネットでお取り寄せ?

刺身好きの母、マグロそっちのけで
「まあ! この茗荷、おいしいわ!」
刺身のツマに熱中。

 

きのこのホイル焼き。

シャキシャキのしめじ、舞茸、肉厚の椎茸、えのき。

 

出来立て、湯気がたっているお豆腐。

何も付けず、口に入れると、大豆の甘さが広がる。

 

そして…
  このお餅は、雲丹を巻いてある。

餅好きではないが、餅というのはなんとおいしいものか!と思った。

パリッと焼かれて、かつ柔らかくのび、醤油の香ばしさと、雲丹のねっとりした旨みが餅とからんで、ため息が出てしまう。

あっという間に2人とも食べてしまった…
「えーっ!!
  お母さん、雲丹も食べたの?!」

母は雲丹が大嫌いなのだ!

「おいしくて無我夢中で食べちゃったわ〜」

 

菊の花の酢の物。

ほどよい酢加減。

 

こんがりといい色に焼けたサワラ。

 

食べることに夢中で、冷めた「高千代」の最後の杯を口にふくんで、愕然とした。

乙女のような風情が失せてむき出しになった骨格は、清冽で豪快、真の水の味、そのものであった…

ワインも抜栓して1時間後、6時間後、1日後と、開花して味が変化していくのがドラマチックであるが、
日本酒とはなんとまあ… 繊細で微妙で豊かで… そしてクレイジーな酒であることか。

 

まるまると色よく漬かった小茄子。

 

さすが米どころ。

もう入らないかと思ったけど、お米のおいしさには勝てません。

入れてしまいました。

 

ミントとチョコレートのヨーグルトシャーベット。
シャーベットにフォーク?
理由が分かりました。

手作りのシャーベットは乳化剤や油脂が入っていないので、薄い貝殻状の氷の塊となり、スプーンでしゃくえるようにはならないのだ。

やや溶けてきたらフォークで刺してかじる。

食べ過ぎたおなかにミントがさっぱり、そしてチョコレートのほろ苦さがちょうどいい。

この味に至るまでに、かなりの試行錯誤があったに違いない。

 

夜の「扇の湯」

「龍神の湯」よりぬるい。
39〜40度くらいであろうか。

猫が押入れの隅でくるっと気持ちよさそうに丸まるように、このお風呂場には、はじっこの小さな隠れ家みたいな居心地のよさがある。

1時間ほどのんびりと入っていた。

夜中の12時までは川がライトアップされている。

館内の明かりはちゃんとついていて、けっつまずいたりしなかった。

 

朝の「扇の湯」

きれいな四分の一の弧を描いている。

 

朝ごはん。

 

輝くお米。

 

お味噌汁は、ジャガイモ、ニンジン、大根など、おおぶりで具沢山。

 

順次温かいものを運んでくれる。

 

太く柔らかくおいしいアスパラ!

そういえば福島ではヒモみたいなアスパラを食べたのであった…

 

鯵の干物も甘塩でおいしく、伊豆の旅館かと思えるくらい!

 

ソーセージおいしい、そして添えられたルッコラの一片が香り高い。

 

しし唐の煮物。

 

出し巻き卵。

 

漬物、甘塩の梅干。

 

イチジクのコンポート。

ミントの葉も新鮮。


 

一番小さな貸切のお風呂。 2人でいっぱい。 鍵をかけて入る。
 

 

残念なことに、このお風呂だけは温泉でない。

でも、とてもきれい。

 

廊下の突き当たりの椅子に座ろうなんてだれも思わない。

座って見えるのは、廊下の反対の突き当たり。

でも、ここにあるとないとでは大違い。

大きすぎ、古くなった建物を全面改装できなくても、できるだけ目でも心地よく、和らいでもらいたいという気持ちが伝わってくる。

 

踊り場のソファも、座れば前は階段。

だけどテーブルに置かれた文章に、なんだかなごむ。

 

朝、若女将にタクシーをお願いしたら、よかったらもう1組の客と駅までお送りしますが、と言っていただいた。

ありがたい!
タクシー4000円は結構大きい。

トイレの鍵はどうやってかけるのか、ついにわからず。

廊下にはむきだしの延長コード、部屋の電気スタンドを引っ張り出すと、フワッとほこりが落ちていく。

こういうことが許せない人には向かない宿だろう。

でも私には、宿全体の、一生懸命感、が心地よかった。

ぬるめのいいお湯、貸切りのお風呂、そしておいしいお食事。

豊かな水と土地の恵みを受けた旅だった。

 

朝ごはんのおかずだけでおなかいっぱいになった母は、おひつのご飯をお握りにしてもらった。

帰りの新幹線で包みを開くと、大きなお握りが3つも!

「ああ〜 おいしい!」

おにぎりをほおばりながら、幸せそうにつぶやく母であった。

新潟県、がんばれ!

 

 

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